児童文学の名作ランキングベスト10【小学校高学年向け】

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長い本を読むのがちょっと苦手な小学校高学年(5年生~6年生)くらいのお子さんにおすすめの、児童文学小説を厳選しました。

今の時代、子どもが自分からすすんで手に取るのは、どうしてもスマホゲームや携帯ゲーム機、せいぜい漫画、という感じですよね。活字をえんえんと追わなきゃいけない分厚い小説は、ちょっと抵抗があるお子さんも多いと思います。

そこで、文章の読みやすさを重視した児童文学10作品をご提案!

ポイントとしては「文体がライトで読みやすく」、「筋が複雑でない」、「心から感動できる」珠玉の10本を選んでみました。

それでは、読みやすさ抜群の児童文学の傑作ベスト10をどうぞ!




第10位 夏の庭

町外れに暮らすひとりの老人をぼくらは「観察」し始めた。生ける屍のような老人が死ぬ瞬間をこの目で見るために。夏休みを迎え、ぼくらの好奇心は日ごと高まるけれど、不思議と老人は元気になっていくようだ――。いつしか少年たちの「観察」は、老人との深い交流へと姿を変え始めていたのだが……。喪われゆくものと、決して失われぬものとに触れた少年たちを描く清新な物語。

湯本香樹実の鉄板のベストセラー、

『夏の庭』!

たぶん近年の日本の児童文学の名作といえば必ず名前が挙がる作品じゃないか思います。

けっこう前ですが映画化もされていますね。

でも何と言ってもこの物語は、

湯本香樹実さんの読みやすくて鮮やかな文章を体験して欲しいです。

湯本さんはほかにも子どもを題材にした素晴らしい作品が多数ありますが、

どれを読んでも感心するのはその分かりやすい文体です。過不足無く状況を説明しながら、こちらの想像力を刺激するお手本のような文章。

どれもストーリーがドラマチックなので読書感想文の題材としても向いています。

第9位 ごめん 

1990年に『お引越し』でデビューしたひこ・田中さんの名作。

小学6年生の男の子に訪れた淡い初恋を描いた、甘酸っぱい物語です。

ある日俺は、大人になった。どうも、なんか勝手が違う。俺の気持ちと違うところで、勝手に俺のことが決められてるみたい。そんなとき俺は、ナオちゃんに出会った。6年生のセイイチに突然訪れた性のめざめと淡い初恋。思春期の入り口に立った少年の、甘酸っぱく、気恥ずかしく、でも不思議にすがすがしい日々を描いた傑作が、奈良美智描き下ろしの装画で復活。

男の子の性の目覚めの戸惑いを面白おかしく描いていて、本人は大変でしょうけど小説で読むと微笑ましいw

映画化もされています。

全編コメディタッチでゲラゲラ笑えるのに、最後にキュンとさせてくれる良作!

ちょっと長いお話ですが、ひこ・田中さんには『カレンダー』という名品もあります。

こちらは中学生の女の子が主人公のお話。

初恋、疑似家族、大人の世界への憧れ・・・・少女漫画の活字版みたいなノリで読めますが、かなり内容は濃くてエピソードが多彩。

文章はかなり砕けているのでライトノベルに近い感覚で読めます。

活字に慣れてきたらおススメ。特に女の子なら、きっと夢中になると思います。

第8位 青い羊の丘

青い羊の丘に佇む「ぼく」が日々出会うのは、不思議で素敵なモノたちばかりだ。たとえば天使の子供、魔術師に旅人、人語を喋る狼、千年プラタナス――。児童文学の雄・竹下文子が紡ぐ新感覚ファンタジー!

童話作家・竹下文子さんのファンタジー色溢れる優しいエピソードの数々。

短い掌編で構成されていて、美麗なイラストも多いのでかなり読みやすいです。

幻想的で美しいイメージの連作集で、一見まやかしの現実逃避に感じられる人もいるかも知れません。

でも現実世界の辛さや矛盾と戦うために、子どもにはどうしても「ファンタジー」を必要とする時期があります。その時にどんなイメージを心に焼き付けるかで、その後の人格や気立てがだいぶ変わってくるのではないかと思います。

竹下文子さんは『木苺通信』や『サンゴロウシリーズ』など童話の傑作が多く、どれを読んでも質が高くて間違いないですが、小学校高学年ならこの作品がピッタリな気がします。

第7位 きのう、火星に行った。

6年3組、山口拓馬。友だちはいらない、ヤル気もない。クールにきめていた。ところが突然、病気がちの弟・健児が7年ぶりに療養先から戻ってきて、生活が一変する。家ではハチャメチャな弟のペースに巻き込まれ、学校では体育大会のハードル選手にでくちゃんと選ばれる…。少年たちの成長に感動必至。

笹生 陽子さんのジンと胸が熱くなる少年の心の成長の物語。

非常に読みやすくてサラサラ読めますが、主人公の拓馬に感情移入し出すと胸がチクチクしてたまらなくなります。

きっと子どもでも大人でも、読んだら「わかるー!」「知ってる、この感じ!」ってなります。

家族と衝突したり、友達とぶつかったり、ゴツンゴツンといろんなところにぶつかりながら、拓馬少年は「生きる意味」そして「ほんとうに熱くなれるもの」を獲得していきます。その過程の描写が、もうたまらなく愛おしい。

笹生先生のデビュー作『ぼくらのサイテーの夏』も甲乙つけがたい良作なので、本作が気に入ったらぜひ手に取ってみてください。

第6位 バッテリー

「そうだ、本気になれよ。本気で向かってこい。――関係ないこと全部すてて、おれの球だけを見ろよ」岡山県境の地方都市、新田に引っ越してきた原田巧。天才ピッチャーとしての才能に絶大な自信を持つ巧の前に、同級生の永倉豪が現れ、彼とバッテリーを組むことを熱望する。『これは本当に児童書なのか!?』ジャンルを越え、大人も子どもも夢中にさせたあの話題作が、ついに待望の電子化!

あさのあつこさんの大ヒットシリーズ『バッテリー』!

超有名作ですが、老若男女問わず、誰が読んでも面白くて泣ける小説なので未読の方は是非。

まるで少年スポーツ漫画のような無駄のない展開で、読む人を熱くさせる恐るべき傑作!

主人公の原田巧の心の成長と、仲間との友情物語に何度読んでも涙が溢れます。

大人が読んでも胸に熱いものがこみ上げる永遠の名作だと思います。

一巻だけでも完結していますが、全6巻もあるので漫画連載のように長く楽しめますよw

第5位 ミカ!

こっそり流す涙のむこうには幸せな明日がある。双子のミカとユウスケの瑞々しい小学校ライフ。第49回小学館児童出版文化賞受賞作。

謎の生き物「オトトイ」を拾ってきた双子の兄・ユウスケと、男勝りな妹のミカ。

二人は互いになんでも相談できる間柄でありながら、最近はなんだかギクシャクした関係に。

それは男女の違いに少しずつ目覚めていく時期でもあり、「それぞれ別の個人なんだ」ということに徐々に気づいていく双子の心的な別れの時期でもあったのです。

これも非常に砕けた読みやすい文章ですが、

内容はとても哲学的でイイ!

むずかしくは感じないので物語をそのまま受け止めれば、きっと子ども心に何か感じ取ることができるはず。言葉ではなかなか「ここがポイント」とはうまく言えない小説です。

とにかく一度、読んでみて!

ユウスケとミカのその後を描く中学生編『ミカ×ミカ!』もおススメ。

さて、オトコオンナのミカはその後、どんな女の子になったでしょう?

彼氏が出来たとか、なんとか・・・・

第4位 選ばなかった冒険

岡田淳さんは現代の日本の子供たちを主人公にした「異世界もの」のファンタジーにとくに定評があります。私も思春期の頃によく読んでいました。

一見、ライトノベルのファンタジー小説と似た設定を用いていますが、その世界観の緻密さとリアリティ、ハラハラドキドキの緊迫感はちょっとレベルが違う。

いわゆるライトノベルのファンタジー作品には、すぐに超自然的な能力に目覚めたり最強の戦士になったりと、荒唐無稽な展開の作品をよく見かけますが、そういうものばかり読んでいると現実の「泥臭さ」を軽視してしまう傾向があります。

そういう意味では岡田淳さんのファンタジー小説は、お手本のような抑制の効いたリアリティに満ちていて、ある意味泥臭く、それゆえに「納得感のある」ストーリー。

すべての話の筋に無駄がなく、現代社会への風刺も随所に見られ、大人が読んでも「よく出来てるなぁ」と感心してしまう見事さです。

同じ作者の『二分間の冒険 』もおすすめ。

子どもが本当に求めているファンタジーとは何かを垣間見れます。

現代日本の児童書を代表する一作です。

第3位 十一月の扉

双眼鏡の中に、その家はふいにあらわれた。十一月荘――偶然見つけた素敵な洋館で、爽子は2ヵ月間下宿生活を送ることになる。十一月荘をとりまく、個性的ながらもあたたかい大人たち、年下のルミちゃんとのふれあい、耿介への淡い恋心・・・・・・そして現実とシンクロする、もうひとつの秘密の物語。 「迷うようなことがあっても、それが十一月なら前に進むの」。十一月の扉を開いた爽子を待ち受けていたのは・・・・・・。

高楼 方子さんの初期の傑作にして、思春期の女の子のバイブル的存在の本書。

中学生の女の子が主人公のお話ですが、小学生でも読みやすいやさしい文章です。

いわゆる「雑居もの」で、十一月荘という下宿屋さんに集う個性的な登場人物が内気な主人公を翻弄していきます。でもそれは、未来に漠然と不安を持つ子どもの視野を広げる、大切な時間。この本を読むたびに、「私もこういう体験したかったなぁ~」と羨ましくなっちゃいますね。

そして、そんな爽子にも淡い恋の予感が・・・・

(≧◇≦)

現実とファンタジーのギリギリの境目を鋭くとらえた、傑作児童文学です。

第2位 サマータイム

佳奈が十二で、ぼくが十一だった夏。どしゃ降りの雨のプール、じたばたもがくような、不思議な泳ぎをする彼に、ぼくは出会った。左腕と父親を失った代わりに、大人びた雰囲気を身につけた彼。そして、ぼくと佳奈。たがいに感電する、不思議な図形。友情じゃなく、もっと特別ななにか。ひりひりして、でも眩しい、あの夏。他者という世界を、素手で発見する一瞬のきらめき。鮮烈なデビュー作。

人気作家・佐藤多佳子さんのデビュー作にして児童文学史に残るであろう名作です。

最初に読んだ時は

全身に鳥肌が立ちました。

好きすぎて。

4つの中編からなっており、それぞれ独立した作品ですが、登場人物は繋がっているので連作と言っていいと思います。

収録作品:

・サマータイム

・五月の道しるべ

・九月の雨

・ホワイト・ピアノ

正直、これがデビュー作だったことが作者さんにとって幸せだったのかどうか・・・・

あまりにも鮮烈で美しく完成された作品なので、その後の小説を書くに当たってハードルが高かったのではないかと勝手に推察します。

そのくらい素敵な連作です。

特に表題作『サマータイム』のラストの爽快なことったら!!

(≧◇≦)

第1位 こうばしい日々

第1位は人気作家・江國香織

『こうばしい日々』!

江國香織さんはキャリアの初期に子どもを主人公にした作品や童話風の短編を数多く残していますが、中でも好きなのがこれ。

恋に遊びに、ぼくはけっこう忙しい。11歳の男の子の日常を綴った表題作など、ピュアで素敵なボーイズ&ガールズを描く中編二編。

アメリカで家族と暮らす日本人の男の子を主人公に、日米の文化差や考え方の違いを子どもの目線で鋭く風刺し、なおかつ生き生きとした児童文学としても読ませる不朽の名作。

何と言っても素晴らしいのは、ちゃんと「子どもになりきって」書かれているところ。

大人が考えた「子供向けのお話」ではなくて、本当に小学生の頃に自分も考えていたようなことや生活態度が出てきて、すごく既視感というかリアリティがあるのです。

そして、押しつけがましくない、さらりとした筆さばき。

風通しがいい文章というんでしょうか。

読みやすいし想像力が湧いてくるし、素晴らしいですね!

大人に対する期待や不信感なども、読んでて「分かるなぁ」と感じいりました。

仲良くしていた女の子とふいに気まずくなってくっついたり離れたりする場面なんかも、読んでいてドキドキさせられます。同年代の子なら、きっと「この感じ知ってる!」って思うんじゃないかしら。

女の子ならば、同時収録されている 『綿菓子』 という中編もおススメ!

年の離れたお姉ちゃんの彼氏を好きになってしまった、小さな女の子の苦しい胸の内をみずみずしく描いた傑作少女文学です。

詩的で美しい言い回しと映像的な情景描写が非常に印象的な傑作ですよ!

児童文学で「読書癖」をつけちゃおう。

いかがでしたでしょうか?

出だしで一度入り込んでしまえば、児童文学は情感豊かで心が震える感動作が多数あるので、子どもの頃に好きな本に出会えると、読書に抵抗無くなるお子さんも多いと思います。

要は最初の出会い方がけっこう重要で、本に対して苦手意識が付いてしまうとそのまま大人になっても敬遠してしまいがちです。

是非、読みやすくて質の高い児童文学作品から、豊かなイマジネーションが身に付く「物語」の世界を経験していただきたいと思います。

以上、読みやすい児童文学の傑作ランキングベスト10でした!